連日の暑気を洗い流すかのようにいきなり降り始めた雨。
ポツポツと振りだしたかと思ったのも束の間、
一気にバケツをひっくり返したかのような勢いに。
典型的な夏の夕立ち。
ツイてない。
たまたま近所に出かけた帰り道。
何もこのタイミングで降らずとも。
あと、5分もすれば僕は家にたどり着くのに。
つくづく僕は雨男のようだ。
走るにはちょっと距離があるし、
それに、尋常じゃない雨の勢いに急いで帰ることを諦めて
近くの休みの店の軒下で雨宿り。
煙草を一服。
空を見上げる。
しばらくは止みそうにない。
参ったなぁ。
ぼんやりと立ち尽くす僕。
すると、向かいのたこ焼き屋のおばちゃんが何やら僕に向かって言っている。
手には茶色い傘。
「これ持って行き!」
渡りに船、夕立ちに傘。
そのたこ焼き屋は、普段は高校生でいっぱいの店で、
あることは認識していながらもなんだか入りづらく、
いつも通り過ぎている店だった。
一滴でも当たるのを避けるべく、走って道を渡る。
「これ持って行き!持って来んでええから!!」
改めておばちゃんは僕に傘を勧めてくれた。
客が忘れて帰って、取りに来る気配もない傘だから返さなくていいのだという。
ありがたい。
おばちゃんの厚意に素直に甘えることにした。
店内にはソースの甘い香りが漂っていた。
お礼半分、食い気半分でたこ焼きをもらうことにした。
16個100円
そりゃ学生でいっぱいにもなるわ。納得。
だが、普段は学生でごった返している店内も、今日はガラガラ。
「夏休みだからね。学園祭の準備やら部活の帰りには来るけど」
と、おばちゃん。そして、
「でも、昔と比べたら減ったねぇ。最近の子は昔みたいに熱心に取り組めへんから」
と、続けた。
ちょっと寂しそう。
ふ~ん、そんなもんか。
というか、おばちゃんは僕を「今の子」として話しているのだろうか。
それとも「昔の子」の括りに入るのだろうか。
僕なんかは、勉強よりもお祭りの方がメインみたいな学生時代だったけれど。
でも、そう熱心でもない奴もいた気もするし。
僕の高校時代といえば10年前。
自分ではさほど前のような感じはしていないのだが、「十年ひと昔」とも云うし…。
などと世間話をしながらぼんやり考えたりして。
出来上がったたこ焼きをおばちゃんは包んで袋に入れてくれた。
その袋とおばちゃんからもらった傘を手に雨の中を帰宅。
そんなわけで今、たこ焼きを食べながらNEWパソコンに向かい、この記事を書いている。
10年前には考えもつかなかったくらい高性能なパソコンで、
同じく10年前には無かったブログというツールを使っている。
やはり「十年ひと昔」なのかもしれない。
けれど、昔であろうが今であろうが、おばちゃんのような優しさが一番嬉しいのは変わらなかったりするわけで。
書いている間に、すっかり雨も止んだ。
夏の夕立ち。通り雨。
エアコンの無い部屋も、少し過ごしやすくなった。
温度のせいだけではない。
多分、嬉しいキモチのせいもあるのだろう。
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