『白浪五人男 徳川の埋蔵金』(鈴木輝一郎著、双葉文庫)
を読んだのです。
『白浪五人男』といえば河竹黙阿弥作の『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』、
歌舞伎の超有名な演目のひとつです。
まあこの作品(今回読んだ本ね)は、その『青砥~』に着想を得て書かれたオリジナルストーリィなんだけど。
その荒唐無稽具合ったら!
最初の方こそ本家をなぞるシーンがちりばめられてるわけですが、
話が進むに従ってどんどんはちゃめちゃに!
読みながら爆笑モノです。
途中から僕はドラゴンボールでも読んでるのかと錯覚しちまうくらい。
面白すぎるので、浜村淳ばりにネタバレしまくりで書いていきます。
まずタイトルからして面白い。
糸井重里が歌舞伎でもやってるのかと思ってしまうもの(笑)
主人公の日本左衛門(歌舞伎では日本駄右衛門と微妙に名前を変えられてる、実在したらしい盗賊ね)ったら、
剣はめちゃめちゃ強いわ、気合いで相手を圧倒するばかりか火の玉まで飛ばしちゃうわ。
カメハメ波ですよ、まさに。
ともかく武術学術色事なんでもござれのスーパーサイヤ人。
弁天小僧菊之助は身軽すぎて、飛び掛かって斬りつけた相手の防御の反動で浮いたまんましばらく戦うなんて立花兄弟もびっくりの荒業をこなしちゃうし。
南郷力丸は素手で壁は壊すわ建物は崩壊させるわ。
この二人が主従関係だってんだからまさに弁慶と牛若丸。
で。
そんな彼らが徒党を組んで時の将軍、徳川吉宗に喧嘩を売るところまではまだわかる。
タイトル通り、徳川家康の埋蔵金を強奪せしめて吉宗に一泡吹かせようってとこまではある程度予測もついた。
ここからがすごいところ。
なんだかんだで、なぜ家康の秘宝を探すようになったかは長くなるから割愛(笑)
散々戦った挙句に財宝の隠し場所辿り着いたと思っておくんない。
そこは富士山の樹海。
洞窟の中の人口の地底湖。
家康の碑文があり、金三千万両に値すると書かれた財宝は「ちらのざう」。
「覆水盆に返らず」の碑文に苦笑しながら地底湖の水を抜くと、
現われたのはなんとティラノザウルス!
もうこの辺りで面白くって仕方ない。
しかも、一度は命からがら逃げおおせるのだけれど、
再び追ってきたティラノザウルスに、
「巨竜の次の獲物は、平穏に暮らしている庶人であろう。
この意味では、義賊を標榜する日本左衛門の敵でもある。
考えようによっては、庶人の生き血を絞り、命を食らう点では、
倫理なき官憲と似たようなものでもある。
成敗するに足る相手といえようか。」
なんていう滅茶苦茶な論理でティラノザウルスと戦うのだ。
仲間を失いながらも巨竜を倒し(それも、弱点が塩というわけのわからない設定、笑)
追ってからも逃れる左衛門だが、生きる目標も失い、自首。
そして、当然打ち首獄門に…。
で、終わるのかと思いきや。
ここでまた思いっきり吹き出しそうな結末が。
目を開けると、周りには死んだはずの弁天小僧菊之助や南郷力丸や赤星十三郎が。
これね、地獄で待ってたとか、夢オチでしたとかそんな陳腐な結末じゃあございません。
一人生き残った忠信利平(この本では左衛門に古くから仕える爺という設定)が、
ティラノザウルスがなぜ百数十年も湖底で生きていたのかを不思議に思い、
もしやと思ってその水を採取し、死んだ仲間たちを蘇生させてたって大どんでん返し。
もうここまで来たらどうにでもなれ。
こうして最後は白浪ゾンビ男たちが大見栄を切って終わるという、なんとも痛快な物語。
途中かなり省略したから、これだけ読んだら実際以上にナンノコッチャ!?な感じでしょう。
省略した中にも、爆笑なエピソードは満載なんだけど。
あ~僕にもっと文章力があったらなぁ。
この面白さ、ぜひ読んでみていただきたい。
元ネタ知らなくても全然大丈夫だから。
たまにはこんなのも面白い。
PR
http://79rpm.blog.shinobi.jp/Entry/246/知らざぁ言って聞かせやしょう